本屋に行ったら「タナカカツキの選んだ本」というコーナーがあって、そこに置かれていた。
全然知らない漫画家だったのだけど、なんともいえない独特の雰囲気で気に入った。
まず惹かれるのはつげ義春みたいな絵。
表紙からはわからないけど、キャラクターの顔なんかは花輪和一の絵のようにも見え、少々エロチックな面もある。
となるとストーリーにもつげ義春的なものを期待してしまうのだが、それはこっちの勝手な願望というもの。
主に大人の世界を描くつげ義春と比べると、この作家は子供の微妙な心の揺れを描くのがうまい感じだ。
本の帯には「庭と植物、少女、縁側」とあって、まさにそういうモチーフの短編ばかりが集めてあり夏の設定が多く、どこか懐かしい。
この庭と植物がジャングルを連想するようなすごい茂り方で、ヘチマとかスイカも出てくる。
夏好きな自分としてはそれだけで居心地がいい。
念のため話の内容までは書かないでおくけど、わりと素朴なストーリーが多い中、雨の日の図書館が舞台の一遍は少し狂気じみていて強く印象に残った。
収録作品の多くは80年代にガロ系の雑誌に発表されたもので思ったより古いので驚いたが、最後に収録されている「夏の庭」のみ95年のもの。
この作品だけ絵柄が大ざっぱな感じ変わっていていまひとつに思えた。
元々寡作な人だったみたいだけど、今でも活動しているのか気になるなぁ。
80年代への妄想がまた広がってしまった。
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